自衛隊と改憲論議

ロシアが主権国家であるウクライナへ一方的に軍事攻撃を仕掛けました。当初、ロシアは威嚇だけであって、軍事侵攻は絶対に無いと言った意見もありました。
しかし、ロシアは一方的にウクライナの一部地域を独立国家として承認し、そこの人民を守るという名目で一方的な軍事攻撃を開始したのです。この21世紀に、こんな野蛮な戦争を目の当たりにするなんてという意見も出ていますが、綺麗な戦争などありません。また、多くの主権国家が存在する限り、当たり前に存在するリスクなのです。

このことがきっかけとなり、日本で今まで以上の国防論議の機運が高まっています。
国防論議の中でも、自衛隊・改憲・防衛費が主なアジェンダとなっています。
防衛費については予算額だけで論じるには、本質を見失うおそれもあり、いつか記載したいと考えています。

日本国憲法には、主権国家を防衛する軍隊について明記されていません。また、国会においても憲法9条があることを理由に自衛隊の存在を違憲としている政党もあります。
憲法がアメリカのGHQにより創られたとか、当時から日本国の意思が入っていたとかは、今更大きな問題ではありません。そもそも、国家や世界の情勢が大きく変化しているなか、憲法施行後75年という長きにわたり、一度も改憲されていないことの方が驚きです。

自衛隊の位置づけを含めた改憲論議の機運が高まっている中、国会では改憲論議に肯定もしくは論議する野党政党が出てきたのは、国家の重要なファクターの一つである安保をセンターと位置づけて論議できる環境になってきているのではないでしょうか。もちろん、民主主義国家として賛否存在するものであり、また、それを論議することが重要です。

反対の立場にある代表的な2つの政党(他にも反対する政党はあります)について簡単に確認しました。

政党:立憲民主党

いわゆる安全保障法制について
日本国憲法9条は、平和主義の理念に基づき、個別的自衛権の行使を容認する一方、日本が攻撃されていない場合の集団的自衛権行使は認めていない。この解釈は、自衛権行使の限界が明確で、内容的にも適切なものである。また、この解釈は、政府みずからが幾多の国会答弁などを通じて積み重ね、規範性を持つまで定着したものである(いわゆる47年見解。巻末参照)。
集団的自衛権の一部の行使を容認した閣議決定及び安全保障法制は、憲法違反であり、憲法によって制約される当事者である内閣が、みずから積み重ねてきた解釈を論理的整合性なく変更するものであり、立憲主義に反する。

いわゆる自衛隊加憲論について
現行の憲法9条を残し、自衛隊を明記する規定を追加することには、以下の理由により反対する。
1 「後法は前法に優越する」という法解釈の基本原則により、9条1項2項の規定が空文化する。この場合、自衛隊の権限は法律に委ねられ、憲法上は、いわゆるフルスペックの集団的自衛権行使が可能となりかねない。これでは、専守防衛を旨とした平和主義という日本国憲法の基本原理が覆る。
2 現在の安全保障法制を前提に自衛隊を明記すれば、少なくとも集団的自衛権の一部行使容認を追認することになる。集団的自衛権の行使要件は、広範かつ曖昧であり、専守防衛を旨とした平和主義という日本国憲法の基本原理に反する。
3 権力が立憲主義に反しても、事後的に追認することで正当化される前例となり、権力を拘束するという立憲主義そのものが空洞化する。

出典:憲法に関する考え方~立憲的憲法論議~(2022/07/12)
https://archive2017.cdp-japan.jp/policy/constitution

政党:日本共産党

一、このときとばかりに、日本を「戦争する国」につくりかえる動きが露骨になっている。自公政権や維新の会などは、「敵基地攻撃能力」などと叫び、自民党は「反撃能力」の名で、「敵基地」にとどまらず、「指揮統制機能等」まで攻撃する能力の保有と、5年以内に軍事費をGDP2%以上にする大軍拡を提言した。「敵基地攻撃」は、集団的自衛権を容認した安保法制のもとで、日本が攻撃されていなくても自衛隊が米軍の相手国中枢に攻め込むもので、相手国からの猛反撃を呼び込む全面戦争への道となる。「専守防衛」を投げ捨て、自衛隊を変質させ、大手を振って「戦争する国」に変える、この道を推進するための9条改憲に断固として反対する

出典:憲法施行75周年にあたって(2022/07/12)
https://www.jcp.or.jp/web_policy/2022/05/post-913.html

この条項に照らしていえば、自衛隊をもっとも強く擁護する人でも、いまでは自衛隊が戦力であることを否定する人はいません。その点からいっても、いまの自衛隊のあり方、ついに海外派兵までやるようになった現状が憲法違反であることは明らかであって、自衛隊を違憲の存在だとするわれわれの立場は少しも変わりません。
すでに半世紀、国民は自衛隊とともに生活してきました。“安保条約と自衛隊なしに日本の安全は守れない”ということが、それこそ、国をあげてという形で広められてきました。憲法と自衛隊との矛盾を解決するには、やはり、国民の合意というものが何よりも大事になります。私たちはこういう立場で、三年前の党大会で自衛隊の段階的解消という方針を定めました。

出典:自衛隊をどうする(2022/07/12)
https://www.jcp.or.jp/jcp/22th-7chuso/word/key/01_40ziei.html

集団自衛権についての論議はここでは控えますが、立憲民主党の考えは安保法制は憲法違反と主張しており、護憲主義的な立場を明確にしています。このことから、立憲民主党としては自衛隊は軍隊として認めていないはずです。しかし、自衛隊加憲論では、集団的自衛権が問題で反対しているような表現となっています。もし、立憲民主党が自衛隊を軍隊として認めているのであれば、立憲民主党の憲法の解釈について明確に説明してもらいたいです。

共産党の政策は首尾一貫していますが、先の共産党の志位委員長の発言は非常に問題があります。
上述していますが、共産党は自衛隊を違憲とする立場です。しかし、「万が一、急迫不正の主権侵害が起こった場合は、あらゆる手段を用いて私たちはこれを排除すると、当然自衛隊も含めてやっていくんだ」と発言したことです。
自衛隊を違憲としていながら、戦争になったら認められない存在の自衛隊を攻撃の矢面に立たせようとしているにすぎません。

私たちの私見ですが、2党の安全保障の考え方は、表現の違いはありますが非常に似ていると感じています。
ここまで、私たちの考え方を基に記載しましたが、多くの国民が存在し、いろんな考え方があることは自然のことです。当然、これら政党に限らず、全ての政党に支持者が存在します。

ただ、上述したような政党に矛盾を感じるのは、多様性や民主主義というキーワードをよく使うことです。
つまり、民主主義国家として、いろんな考え方や意見があることを当然理解しているということです。
しかし、自衛隊を含めた改憲論の肯定派に対して「横暴だ、誇張するな」時には「(言ったことを)撤回しろ」などと一方的に相手意見を否定し、一切論議に応じていません。
このことは、むしろ多様性や民主主義を否定しているとしか思えません。

自衛隊を含む改憲論については政党間だけの話題ではなく国民からも出てきている事案です。
反対や賛成の立場はそれぞれあると思いますが、民主主義国家の国会議員として、あらゆる事態を想定した上で、それぞれの意見を出し合い、それを、きちんと論議してもらいたいです。

以上
2022/07/16